「寝ぼけてんのか!!」

僕が定食屋アルバイト初日に浴びせられた怒号。
今でも鮮明に覚えています。
社員のパワハラに体が震えて、労働そのものがトラウマになっていきました。

まだ新人だった僕は右も左もわからず、息つく間もなく走り回る厨房の動きについていけませんでした。

油のはねる音。
鉄板のジュウジュウという焦げる匂い。
「早く!」「皿!」「それ違うだろ!」

野菜クズの散らばる厨房内で、
雷鳴のような声が四方八方から飛んでくる。
まるで戦場でした。
僕はただ、言われたことを必死にこなしているだけなのに、サボってる人間みたいな扱いを受けました。

周りのひとたちに相談しても、「仕事ってそういうものだから」と、半ば諦めたような言葉しか返ってきませんでした。。。

「苦しい労働生活から抜け出したい…」
僕には特別な夢があったわけではありません。

ただ、
自分のペースで生きたかった。
理不尽に怯えたくなかった。
胸を張って、今日も悪くない一日だったと思いたかった。

……それだけです。

朝、目覚ましの音に心臓を掴まれたみたいに起きるんじゃなくて。
職場に向かう途中で、胃がキリキリ痛くなるんじゃなくて。
「今日は怒鳴られませんように」なんて祈りながら出勤する人生じゃなくて。

もっと静かに、生きたかった。

思い返せば、
僕が心の底から「こうなりたい」と思えた労働者は、ひとりもいませんでした。

パン屋で働いていたとき。

エプロンを纏った社員たちは朝5時出勤。
まだ空が真っ暗な時間に店に入って、粉まみれになりながら仕込みをして、
閉店後も片付けと翌日の準備で、気づけば深夜0時を回っている。

目は常に充血していて、「休みたい」「帰りたい」が口癖で、でも誰も辞められない。

あれを見て、
「彼らのようになりたい」とは、どうしても思えなかった。

レンタルビデオ屋では、

バイトリーダーの先輩が、
時給ほぼ最低賃金なのに、店長みたいな責任を背負わされていました。

クレーム対応も、売上管理も、新人教育も全部その人。

昼休憩も取らず、レジ裏でカロリーメイトをかじって、
「まあ、俺がやるしかないしな」
って、笑っていた。

その笑顔が、やけに疲れて見えて。
「頑張ればこうなるのか」と思った瞬間、
胸がスーッと冷えました。

電話オペレーターの仕事場では、
怒鳴り散らすお客さんに、こちらが悪くないのに、ひたすら謝る毎日。

「ふざけんな!責任者出せ!」
「お前じゃ話にならん!」

受話器越しの怒声で耳が痛くなる。

それでも、
「申し訳ございません…」
「ご不快な思いをさせてしまい…」
と、機械みたいに頭を下げ続ける。

人間の心って、こんなふうに削られていくんだ、って思いました。

どの職場でも共通していたのは、
みんな、少しずつ、目が死んでいくことでした。

若い頃は笑っていた人も、数年経つと、感情が薄くなっていく。
愚痴とため息だけが増えていく。

このまま何も考えずに流されていたら、
きっと僕も、同じ顔になる。

「仕方ない」が口癖の大人になる。
「休みたい」という感情しか湧かなくなる。
「怒られたくない」だけで早起きする。
それは僕にとって、人間の生活ではなかった。

僕らの人生は一度きり……。
だから、ずっと本気で考えていました。

どうやったら、
このレールから降りられるんだろうって。

特別な才能もない。
資格もない。
コネもない。
あるのは、

「もう二度と、あの恐怖の中に戻りたくない」
その感情だけでした。

労働というものに憧れなかったからこそ、
「別の道を探そう」と本気で思えた。

夢を追いかけたかった。
趣味に没頭したかった。
毎朝の目覚ましに怯えたくなかった。
好きな場所に住みたかった。

ただ、自分の人生を、
自分の足で歩きたかった。

毎日、誰かの機嫌に左右される人生だけは、
絶対に選びたくなかったんです……。

僕は自由になりたい人は、もれなく働かなくてもいい世の中になるべきだと、心の底から思っています。

仕事のために、お金のために、やりたいことを我慢して、一度きりの人生を消費する。
そんな苦しいレールを一生走らされるのはあんまりじゃないでしょうか。

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